女子学院のクリスマスに寄せて

Vetustatem novitas umbram fugat veritas noctem lux eliminate.

The old yields to the new,
The shadows flee from the Truth,
The night is over, the Light has come.

~St. Thomas Aquinas, “Lauda Sion”

古きものは新しきものに変わり、真実のもとから闇は去り、夜が明け、光がさす。
聖トーマス・アクィナス 《ラウダ・シオン》より引用

10月20日 朝の礼拝の話

10月20日の朝の礼拝で、1952年卒の二神桂子さんのお話を伺う機会がありました。その一部を抜粋してここに掲載します。

私達の学年は終戦の翌年、1946年に中学に入学しました。女子学院は終戦直前の5月25日東京大空襲の時に焼け、西荻窪の東京女子大の5教室をお借りしていたのをご存じだと思いますが、そんな時に入学しました。
私達の部屋は横長で狭く、椅子と椅子に板を渡して3列位で座り、ノートをとることもままなりませんし、1時間終わるとチョークの粉で皆真っ白でした。そんな状態の毎日でも、馴れぬ疎開生活から帰ったばかりの私達は学校に来ること自体が嬉しくて、戦争直後の事とて当時珍しかった美しい芝生の女子大の庭で、休み時間になると鬼ごっこやかくれんぼに興じ、「女子学院の皆さん、芝生の中で遊ばないでください」と何度ご注意いただいたことでしょう。
そんな中で1948年4月に、もとのここ麹町に待望の新校舎が建てられて、本当の自分達の学校に通学出来るようになりました。木の香もかぐわしくペンキもくっつきそうな明るいクリームいろの2階建ての校舎、窓ガラスには盗難予防に1枚1枚JG、JGと書かれ、各学年2組づつの自分の教室がありました。
それですのに、忘れもしない1949年5月10日たった1年1ヵ月しか使わない校舎が原因不明の火事で全焼してしまったのです。まだくすぶり続ける校舎の焼跡の傍らに、当時の山本つち院長がいつもと変わらない和服姿で生徒達の前に毅然としたお姿で立たれ、「我山に向かいて目を上ぐ、我が助けは何処より来たるや」と詩篇121篇を読まれ、今チャイムで聞かれる現在の賛美歌301番を皆で歌ったのです。私達が真に頼るべきものは何か―後になり人生の色々な困難に出会った時心に思い、支えになっているのがこの聖句なのです。
この後たった3日間の休校で、卒業生であられた鳩山薫園長のご厚意で神田の共立学園の7教室がお借りでき、焼け残ったプレファブの教室と塀を壁代わりにして作った、工事用作業教室のようなバラック建の2教室を使って神田と麹町間を歩い通っての2部授業も忘れ得ぬことです。後に体育館となった鉄骨校舎を経て、1950年校の時に鉄筋コンクリートの本校舎が完成、創立80周年を祝った時は本当に嬉しゅうございました。これら多くの困難に出会って在学した私達でしたが、後になって考えてみると、その時々に必要な助けが与えられていたことは誠に驚きと感謝でした。
話は変わりますが、私は40年近く前になりますが、インドのニューデリーで暮した事があります。今はすっかり様変わりしましたが、当時は動物が市民の生活と間近く動物好きの私には飽きる事がありませんでした。様々な動物が家の中からも見られました。勿論家畜としてですが、ゾウ、ラクダ、コブウシ、ヤギ、ロバ、時にはサルや、モンスーンの時期にはクジャクも来て、裏庭で美しいダンスも見せてくれました。そんな中で私の目を引いたのはロバでした。背中に荷物を左右に振り分けて積み、野菜や生活必需品である素焼きの水瓶などを売り歩いていました。ロバはdonkey、バカ者とかとんまなどの意味もあるそうですが、馬と違って小さく、頭を下げて前かがみにゆっくり歩く姿は何となく表情と共に淋しげでもありますが、従順でおとなしく我慢強い動物です。そんな動物でも、先程の聖書の記事のようにイエス様は役立てて下さいました。「主がお入用なのです」と聞いてロバは驚いたことでしょうが、イエス様のエルサレム入場のために立派にご用を果たしました。将来のことを模索して現在悩んでいる方もあるかもしれません。でも様々な苦難の時を経てこの立派な学校で学ばれる皆さんを拝見していて、神さまのお導きの確かさを感じざるを得ません。今している勉強でも、部活でも、生徒活動でも、全てがみなさんの知恵となり力となって必ず将来役立つことでしょう。いつの日か、「主がお入用なのです」と呼びかけられた時には、勇気を出して歩み出すことが出来るよう、よき準備をして下さいますように。

クリスマス礼拝

12月22日、高校は大宮溥先生(阿佐ヶ谷教会名誉牧師)、中学は小室尚子先生(東京女子大学准教授)をお迎えして礼拝を守りました。

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