高校入学式「歓迎のことば」
4月8日に中学入学式と高校入学式が行われました。高校入学式で高校2年生の生徒の述べた「歓迎のことば」を紹介します。
新芽が伸びゆく希望に溢れた春の季節。新入生の皆さん、女子学院高校へのご入学、誠におめでとうございます。皆さんの新しい門出を心よりお祝いし、在校生一同、歓迎いたします。
高校に入学した皆さんは、どのような学校生活を思い描いているでしょうか。通う学校が同じであるため、中学と変わらないと思っている人も多いかもしれません。一年前の私もそうでしたが、実際に高校生活が始まると、中学とは違う一面が見えてきました。本日は私が高校生になって学んだことをお話ししたいと思います。
高校と中学の違い、それは自分自身で考えなければならない場面が格段に増えてくる、ということです。勿論中学においても、毎日の礼拝や講演会で、自分のこと、聖書、平和についてなど、考えるテーマが沢山与えられ、色々と思いを巡らせることがあったでしょう。しかし、これらの問いは漠然としていて、すぐに明確な答えを出せるとは限りません。対して高校では、曖昧なままやり過ごすことはできない、現実的な課題に直面する機会が多くなります。幹部学年となっていく部活や委員会の仕事、勉強、そして進路のような大きな自分の人生に関わる大きな選択にも向きあっていくことになります。高校での「考える」ことは、まずその量が増え、借り物でない自分の考えが必要になる点、責任が伴ってくる点で、中学時代のそれとは異なると感じています。
私が「考える」ことに意識を向けるようになったのは、高校で新しく生徒会に加わったことが大きく影響していると思います。生徒会の仕事が始まってすぐに、私が既存の枠組みにとらわれ、自分自身で考えていないことに気付きました。例年通りの仕事を、まずはきちんとやり遂げることを第一にしていた私には、自ら従来の方法を見直し、次々と改善していく人が眩しく見えました。
私は、創造的に取り組む姿勢が自分には足りないと思い、その理由を見つけるために、自身を振り返ってみました。「考える」ということに関しては、中学の頃、私は運動系クラブの班長を務めており、より良い班活動を行いたいと、常に何かしら頭を悩ませていました。けれどもその時は、顧問の先生や先輩方の指示、また班の細かい決まりがありました。それらに従うことは模範的な対応ですから、そこから外れて、新しいことをしようとは思いもしませんでした。つまり私は、自分で一から何かを描くという姿勢に馴染みが無く、自由に考えることに慣れていないのだと気付くに至りました。
高校、そして生徒会では、それぞれ確かな自分の考えをもっている周りに圧倒されました。生徒会では行動を細かく指示されることはなく、ことあるごとに私自身の考えを問われました。業務上の問題が起きて、先生に相談しに行くと、解決の糸口を沢山教えて貰えますが、最後には必ず、どうするかはあなたが決めてください、と言われます。それまで与えられた枠内で規範に則って動くことでよかった世界から、自分で何をするか決めなければいけない環境に立ち、初めは戸惑いや強い不安を覚えました。焦りが募る中、やるべきことが次々と押し寄せてきます。私は沢山の人の意見を集めたり、長い時間をかけたりしながら、意思決定を繰り返しました。とにかく目の前の仕事や問題に向き合い続けた1年でした。
そんな私ですが、最近、自分に小さな軸が生まれたと感じています。自分の中の軸の存在に気付いた時、ふっと微笑むような、安心感と喜びを覚えました。私のいう軸とは自己を信頼しようとする心です。幹のように私を支え、何か一歩踏み出そうというときに勇気を与えてくれるものです。そしてこの軸は、がむしゃらに頑張ってきたこれまでの全ての経験から少しずつ抽出されてきたのだと感じています。
高校での様々な体験は、これから軸を築いてゆく皆さんの力になってくれるでしょう。経験とは、小さな挑戦の積み重ねであり、子供と大人の狭間にいる私たちの目の前には沢山のチャンスが転がっているのではないかと思います。
私が好きな言葉に「The sky is the limit.」というものがあります。これは直訳すると「空が制限だ」、転じて「限界はない」という意味のことわざです。頭上の一番の天辺だと思っている空でさえ実は自分が設けた制限で、その上には更に広大な宇宙が広がっているように、「自分でこんなものだと思っている先にも、まだまだ可能性はあるんだ」ということだと私は解釈しています。
どうぞ皆さんも、自分の関心を広げ深めたり、将来について模索したりして、この時間を大切に過ごしてください。そして少しの勇気をもって、行動に移してみてください。成功も失敗も、悲しみも喜びも、高校生活における全てが成長の糧になってくれると私は信じています。
皆さんと一緒に過ごす、この女子学院高校での日々を私も楽しみにしています。皆さんのますますのご活躍を心より願い、お祝いと歓迎の言葉とさせていただきます。