標語聖句2007年度

女子学院の標語聖句は、その聖句の意味を生徒が1年の課題として考えるように、年度初めに院長が選んでいるものです。

2007年度の標語「自分自身を愛するように隣人を愛しなさい。」(レビ記 19章18節)

旧約聖書に記されているこの言葉は、イエスさまがしばしば引用されたとして新約聖書にも繰り返し出てくる有名な聖句です。またローマの信徒への手紙やガラテヤの信徒への手紙の中では使徒パウロもこれに言及しています。そういう意味では旧約聖書を出典とする言葉の中でも、今日の私たちに大変よく知られているものの一つです。

私は若い頃は「自分自身を愛するように」という前半部分は実はあまり意識したことがありませんでした。多分人は誰でも自分がかわいいので、「自分を愛する」のは当たり前のことだという程度の認識だったのだと思います。しかし自分がだんだん大人になり、いろいろな経験を積むようになるにつれて、人が自分自身を愛するというのはそう簡単なことでも、自明のことでもないのではないかと考えるようになりました。「自分を愛する」とは「自分を大切にする」ことだと思うのですが、自分でも好きになれない自分自身の弱さやいたらなさ、欠点などに気付きながら、なおそういう自分を受け入れ、大切にするというのは決して当たり前に出来ることではありません。皆さんが中学1年生の時に手にする「女子学院生活」という小冊子にも私は書いているのですが、自分を愛するというのは決して自分を甘やかしたり、自己中心的に生きるということではありません。いつも他人と比較して自分にないものを持っている友人をうらやむだけで、自分が持っている宝を見つけようとしなかったり、困難に直面してすぐにあきらめてしまったり、どうせ私なんかダメな人間なのだと開き直ったりするのは、決して自分を愛する態度ではないのではないでしょうか。

「自分自身を愛するように」という部分は、隣人を愛する前にまず「自分自身を大切にしなさい」という強いメッセージだと理解することが出来ます。いじめを苦にして自殺したり、大きな責任を伴う問題に行き詰って、それに耐えられず自ら死を選んでしまうというような事件が起こるたびに、ますます私たちは「自分を大切にしなさい」というこの聖書のメッセージに真剣でありたいと祈ります。神さまは私たちひとりひとりをかけがえのない大切な人格として心に留め、愛していて下さるというのが聖書の教えです。そのことを知る時に私たちは神を愛することを知り、その時はじめて人は自分自身を愛し、隣人を愛することも可能になるのだと思います。

これまでの標語より