標語聖句2009年度

女子学院の標語聖句は、その聖句の意味を生徒が1年の課題として考えるように、年度初めに院長が選んでいるものです。

2009年度の標語「青春の日々にこそ,お前の創造主に心を留めよ。」(コヘレトの言葉 12章1節)

旧約聖書に「コヘレトの言葉」という書物があります。一時代前の口語訳聖書では「伝道の書」と呼ばれていました。昔コヘレトあるいは伝道者と呼ばれる一人の知者が,人生の意味を尋ね求めていろいろと観察し,探求し,思索を重ねましたが,全てを見極めることは出来ず,心の安らぎを得ることも出来ませんでした。それならばと今度は徹底的に快楽を追求してみますが,やはり満足は得られません。全ては風を追うようなもので捕らえどころがなく,残るのは空虚感のみ。「なんという空しさ,なんという空しさ,全ては空しい」とコヘレトは言います。また「太陽のもと,新しいものは何ひとつない」「太陽のもと,益となるものは何もない」とも断言します。一見極めて懐疑的で虚無的な響きに満ちた書物ですが,しかし最後の12章は「青春の日々にこそ,お前の創造主に心を留めよ」という言葉で始まり,「全てに耳を傾けて得た結論『神を畏れ,その戒めを守れ。』」と締めくくっています。

皆さんの中には神に頼るのは弱い人のすることで,自分の人生は自分で責任をもって切り開いていくものだと思っておられる方があるかも知れません。そして強い人ほど往々にして,「何事も自分の力で何とか出来る」し,「自分のことは自分が一番よく分かっている」と考えがちです。けれども私たちの人生にはいくら頑張っても自分の思い通りにならないことはいくらでもありますし,自分で思うほど自分のことを全て分かっている人も強い人もそう多くはありません。むしろ自分の存在価値が感じられない,人生の意味が見出せないということで悩んだり,苦しんだりする人の方がずっと多いのではないでしょうか。そういう時に自暴自棄になるのではなく,また刹那主義におちいるのでもなく,目を神に向けることが大切です。私たちの思いを越えたところで,神さまが私たち一人ひとりのことを心に留め,覚えていて下さるということを知る人は幸いです。

「創造主に心を留めよ」とは,私たちの創り主なる神が私たちのことを心に留めていて下さるように,私たちも神のことを心に留めて生きるようにとの教えです。女子学院では毎朝「山辺に向かいて」のチャイムを聞いて礼拝を守っています。足もとに目を落としているだけではなく,目を上げて山々を仰ぎ,私たちの助け主なる神を仰ぎ見るということは,最終的には全てを神にゆだねるという信頼につながります。その信頼の上に立って,人間としてなすべきことに全力を尽くすことが大事なのです。青春の日々になすべき最も大切なこと,それは創り主を覚えることです。

これまでの標語より